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「エアライト」開発物語(その2)

 2014年7月、六角柱の衝撃吸収体を内装体に一体成形して衝撃吸収ライナーとした、新型内装「エアライト」を発表しました。「エアライト」付きヘルメットは、「墜落時保護用ヘルメット=発泡スチロール入り」というヘルメットの常識を大きく変える新製品として、多くのヘルメットユーザーの皆さまに、驚きを持って受け入れられました。そして2015年4月、エアライト第二弾として、シールド面付きヘルメットを発売しました。

 

ヘルメットの常識をやぶる

 労働安全衛生規則に定められた「保護帽の規格」では、産業用ヘルメットとして「飛来・落下物用」と「墜落時保護用」の二種類が定められていますが、その両者の兼用ヘルメットは衝撃吸収能力が高いことから、現在では幅広い職種の多くの方に使われています。
 「保護帽の規格」では墜落時保護用ヘルメットの構造要件として『帽体、衝撃吸収ライナー、あご紐を持つもの』とあり、衝撃吸収ライナーの材質は『発泡スチロール又はこれと同等以上の衝撃吸収性能を有するもの』と定められています。この規格が公布された1975年以来、衝撃吸収ライナーは例外なく発泡スチロール製だったことから、「墜落時保護用ヘルメットは発泡スチロール入り」が、ヘルメットの常識となっていました。
 確かに発泡スチロールは衝撃吸収材としてたいへん優れていますが、ヘルメットの帽体と人間の頭との間のごく狭い空間のほとんどを埋めてしまうため、通気性が悪くなり、ヘルメット内部の蒸れを生む大きな要因となります。このため、比較的危険が大きい職場でありながら、飛来・落下物用から墜落時保護用への転換が従業員の反対にあって難航したり、自分のヘルメットから、衝撃吸収ライナーを勝手に外したりするようなケースもありました。
 また、10年ほど前に、前頭部に通気孔を持つ、通気性に優れたヘルメットが開発されて人気を集めていますが、耐電性能がないために、その製品を使用することができない電気関係の職種の方からも、一日も早い、通気性の良い電気用ヘルメットの開発を求められておりました。
 そこで、当社では2011年より、通気性の良い、発泡スチロールを用いない衝撃吸収ライナーの研究・開発を開始し、2014年7月、六角柱の衝撃吸収体(ブロックライナー)をプラスチック製の内装体に一体成形して衝撃吸収ライナーとした、従来にない新型内装「エアライト」を発売しました。

「エアライト」は涼しい

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(写真1)「エアライト」付きヘルメットは帽体内部の隙間が広い

 何といってもエアライトの特長は、涼しいということです。ヘルメットをかぶった人が、風を受けたり歩行したりすると、ヘルメット内部に空気が流れ込みます。この時、ヘルメット内部の隙間が大きければ大きいほど、換気がし易くなりますので、人間の頭から発生する熱や湿気を周囲の気温・湿度まで下げることができます。また、ヘルメット内部に風の流れを感じることによっても、人は涼しいと感じます。
 従来、「発泡スチロールの衝撃吸収ライナーが入った製品は暑苦しい」と嫌っていた方は、それがいかにも風の流れ込みを阻害しそうだと感じられたのではないかと思いますが、エアライト搭載品ならば、発泡スチロールの入っていない飛来・落下物用ヘルメットと同様の感覚でお使いいただけます。

発泡スチロールは断熱に有利?

 当社ではこの一年間、エアライトに関する様々な質問を受けました。その一つが炎天下、発泡スチロール入りのヘルメットをかぶっていた方が、その断熱効果により涼しいのではないかというものです。
 発泡スチロールは家屋の断熱材としても用いますので、ヘルメットの中に入っていると、太陽光(赤外線)から変換された熱エネルギーの伝導を抑えます。しかし、ヘルメットの使われ方は、炎天下でじっと動かない家屋とは異なり、かぶっている人が動いたり、風が吹いたりすることによって、帽体内部の換気が行われます。従って、換気効率がよいヘルメットならば、内部で暖まった空気や湿気は、すぐに押し出されてしまいます。
 次のグラフは37℃に設定した人頭模型に乗せた、エアライト搭載ヘルメットと同型の発泡スチロール製衝撃吸収ライナー搭載品に、45cmの距離から300Wのハロゲンランプを照射した実験の結果です。最初の5分間は風を送らず、その後、時速3.6kmのスピードの歩行に相当する、秒速1mの風を正面から送ります。
 発泡スチロール製衝撃吸収ライナー入りは、風の無い間はそれが断熱効果を発揮して温度上昇を抑えますが、風を送ってもあまり温度が下がりません。これは帽体内部の空間が狭く、換気がうまく行われないためでもありますが、発泡スチロールの熱伝導性が低く、ひとたび温度が上昇すると下がりにくいせいもあります。この発泡スチロールが、ヘルメットでは頭のすぐ近くに置かれますので、暑苦しく感じられるのも道理だと思います。

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 なお、ヘルメット内部の温度を下げるために、帽体に遮熱塗装を施すことはたいへん効果があります。炎天下の屋外で仕事をされる方には、エアライトでの換気に加えて、遮熱加工を施したヘルメットの採用を強くお勧めします。

シールド面付きヘルメット用エアライトの開発

 昨年7月にエアライトを発売して以来、順次その搭載型式を増やして参りましたが、多くのお客様から、シールド面付きヘルメットにエアライトを搭載してほしいという要望を数多くいただきました。
 近年はユーザー各社において、通常ヘルメットとシールド面付きの両方を自社仕様として定め、仕事の内容によって使い分けるケースが増えています。このため、エアライトの採用はシールド面付きが発売されてから、といわれるのもよく分かりました。
 シールド面付きヘルメットでは、発泡スチロール製の衝撃吸収ライナーと帽体のごくわずかなスペースに、シールドガイドという部品と一体でシールド面を装着します。写真2は従来の当社製シールド面付きヘルメットの額の部分を内側から見たものですが、隙間なく部品が配置され、いかにも風通しが悪そうです。
 写真3はエアライト内装を装着したシールド面なしのヘルメットの前頭部です。正面に大きな六角柱の衝撃吸収ライナー(ブロックライナー)が置かれ、シールド面の入る余地は無いように見えます。
 開発部隊はエアライト内装の前頭部部分の六角柱を低くして、シールド面の入るスペースを作るという基本方針を決め、試作を重ねました。しかし、ブロックライナーがつぶれた時にできる樹脂の塊とシールド面との関係から、かえって衝撃荷重が増えてしまうという想定外の問題も生じ、製品化は容易には進みませんでした。
 その後、試行錯誤を繰り返した末、従来のエアライトとは前頭部部分の六角柱の形状や肉厚、配置を大きく変更した上で、製品化することができました。
 写真4は完成したシールド面付きエアライト搭載ヘルメットの前頭部です。写真3と比べると、⑥のブロックライナーの形が異なっているのが分かります。また、写真2と比べると、空気の通り抜ける空間が大きいことが良く分かります。

046-03.jpg  ①帽体の内壁
 ②シールド面
 ③シールドガイド
 ④内装体(ハンモックの足)
 ⑤衝撃吸収ライナー(発泡スチロール製)
 ⑥衝撃吸収ライナー(エアライトのブロックライナー)
 ⑦内装体(ヘッドバンド、汗取りクロス付き)
(写真2)従来のシールド面付きヘルメット(ST#161V-SH)
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(写真3)エアライト搭載(シールド面なし)ヘルメット(ST#161V-JZ)
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(写真4)エアライト搭載(シールド面付き)ヘルメット(ST#161JZV-SH)


 試験の結果、エアライト搭載のシールド面付きヘルメットは、シールド面なしのエアライト搭載品と遜色ない通気性を示しました。また、発泡スチロール製の衝撃吸収ライナーを用いた従来製品に比べて、全方位での衝撃吸収性能が、同等かそれ以上であることも検証されました。
 是非とも、多くの皆さまにエアライトをお使いいただきたいと思っています。
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(写真5)透明帽体に装着したエアライト内装とシールドガイド、シールド面