開発物語

「透明ひさし付きヘルメット」開発物語

「視野が広く」は、ヘルメットの機能としてはかなり大切なことです。ひさしが邪魔をして、思わぬ所で頭をぶつけたという経験は、かなりの方がもっておられることと思います。

そこで当社は、一貫して、視野を広くということに留意してヘルメットを開発してきました。 視野を広くとるには、何よりも、ひさしを前下がりにし過ぎないことです。野球で使う帽子は何となく格好がよいと思います。 ひさしが目深になるから、外界の風景が視野から制限されて、飛んで来る球だけを見るのには適しているのでしょう。
しかし、私たちのヘルメットは目的が違います。格好だけを追って目的を間違えないようにしないといけないと考えています。

ひさしが透明であったなら

飛来落下して来る物体から頭部を守るには、どうしても最小限のひさし部が必要です。
また、墜落したり転倒したりした時、ひさしがあると、大切な顔面を守るのに役立ちます。
「視野は狭くなりますが、ひさしはどうしても要る」、「ひさしをつけながら視野を広くする方法はないか」、ここから、”透明ひさし”の考えが浮かんできました。

安全性能を満たした透明ひさし

1990年ごろから、それまで主流だった丸い形のヘルメット(MP型といいます)に代わり、 アメリカンタイプともよばれる、ひさしが突き出た製品が増えてきました。
この新しいタイプのヘルメットは、格好は良いのですが、 MP型に比べてやや上方視界が狭く、仕事によりひさしが邪魔になる場合が出てきました。
そこで注目されたのが、透明のひさしです。
そのころ他社が販売していた透明ひさし付きのヘルメットは、ひさし部分を帽体にはめ込んだり接着した製品だったため、落下物があったり、 物にぶつかる頻度の高いユーザーには不向きでした。
このため、当社に対して、安全性能を満たした透明ひさし付きヘルメットの開発が強く求められるようになりました。

初代 ST#141Vの開発 ST#141V

初代 ST#141Vの開発

 接着せずに透明のひさしをとり付けるためには、二重成形法とよばれる方法を用います。予め成形した透明ひさしを金型に差し込んだ上で、 帽体を成形します。
 原理は簡単ですが、テクニックを要する成形で、なかなか平滑な接続面を出すことができません。 接続面の断面形状を工夫し、樹脂の分子量を変化させ、さらに成形条件を微妙に変えながら試作を繰り返し、満足のいく製品になるのに約1年の歳月がかかりました。
 1994年、『ひさしを透明にすることにより、従来のひさしとしての機能を損なうことなく、安全かつ能率良く作業を行うことが可能なヘルメットおよびその製造方法』 に関する特許を出願し、1999年に登録、1994年の7月、当社は世界に先駆けて一体成形された透明ひさし付きヘルメット「ST#141V」を発売しま した。

透明ひさし付きヘルメット第二弾を発売 新製品 ST#169V

透明ひさし付きヘルメット第二弾を発売

 その後、透明ひさし付きヘルメットはさまざまな業種のお客様から好評をいただき、年々着実に販売数量を増やしてまいりました。
 2003年7月、ST#141Vは欧州連合の定めた安全基準を満たし、CEマーキングを取得しました。日本で生まれた透明ひさしのアイディアが、 海外でも認められて喜んでおります。
 このたび、透明ひさし付きヘルメットの第二弾として、人気の溝付きヘルメットST#169型をベースにした「ST#169V」を発売しました。
 従来のST#141Vよりも25グラム軽量化して、さらに使いやすくなりました。アウトドアでの活躍を期待しています。

独自の性能基準

労働安全衛生法の「保護帽の規格」には、ひさし部分の強度について定められておりません。
そのため、当社では、発生する恐れのあるさまざまな事故やうっかりミスを想定して、独自の性能基準を設定し、 万全を期しておりますので、皆様に安心してお使いいただけます。
以下に当社独自の試験方法をご紹介します。
割れたひさしが顔面を傷つけないようにするために、一連の衝撃試験では、ひさしの割れが端部にまで及ばないことを合格要件にしています。

ひさしの中央部が割れることにより衝撃を吸収する。ひさしの端まで亀裂が生じないことを合格要件とした。

ひさしの中央部が割れることにより衝撃を吸収する。ひさしの端まで亀裂が生じないことを合格要件とした。

(1) 耐絶縁性試験

1. 帽体とひさし部分の接合面に隙間がないことを証明するために、厚生労働省の規格よりも10%アップの電圧を加えます。
2. 新品ではなく、使用中の製品を想定し、耐側圧性試験済み試料に対して、「絶縁用保護具の定期自主検査」と同様の試験を行います。

 

(2) 難燃性試験

 ひさし部が火に暴露された時を想定して、ひさし部に直接、ブンゼンバーナの炎の先端(JIS T 8131による)を10秒間あてます。

 

(3) 耐側圧性試験

 側面方向の挟まれ事故を想定して、JIS T 8131に基づいた試験を行います。JISの要件に加えて、試験後にひさし部に亀裂が発生しないことを加えました。

 

(4) ひさし衝撃試験

1. 飛来・落下物用
 ひさしに飛来物が直撃することを想定して、 ひさし部に半球形5kgのストライカを1m落下させます。
2. 墜落時保護用
 墜落時にひさしが地面を直撃することを想定して、ひさし部に平面形5kgのストライカを1m落下させます。

 

(5) ひさし貫通試験

 鋭角の物体がひさしに落下することを想定して、ひさし部に円錐形3kgのストライカを1m落下させます。

 

(6) 衝突試験

1. 作業中、壁に衝突することを想定し、ひさし部に平面形5kgのストライカを25cmおよび55cmから落下させます。 これは、衝突速度を歩く速度の2倍、3倍に換算して設定したものです。
2. あご紐を持って振り回した時に壁に衝突することを想定し、ひさし部各所に各3回、半球形5kgのストライカを50cm落下させます。

 

(7) 耐荷圧試験

 使用者がヘルメットに座ることを想定し、砂袋80kgをヘルメットの上に置いて10分間放置します。
 以上、ヘルメットのタニザワが自信を持ってお奨めする透明ひさし付きヘルメットをご紹介しました。