タニザワ

エイジフレンドリーな職場づくりに保護具の軽量化 -軽量化によって疲労を抑え、高年齢労働者の就労継続を支援-

2026.02.27

1. 政策的要請への対応:エイジフレンドリーガイドラインと2026年問題

1-1. 高年齢労働者の安全確保が「努力義務」へ

我が国の労働環境は、少子高齢化の進展に伴い、60歳以上の高年齢労働者が死傷者数全体の約26%(2018年)を占めるなど、構造的な変化に直面しています。

高年齢労働者は豊富な知識と経験を持つ貴重な戦力ですが、加齢に伴う身体機能(視力、筋力、平衡感覚、反応速度)の低下により、労働災害の発生率が高く、一旦負傷すると休業が長期化しやすいという課題があります。

こうした背景から、厚生労働省は「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン:以下、AFG」を策定しました。

【エイジフレンドリーガイドライン(厚生労働省)】
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000815416.pdf

労働安全衛生法の改正により、20264月から、すべての事業者に対してAFGに基づく措置を講じることが努力義務として課されます。事業者は、高年齢労働者がその特性に応じて安全かつ安心して働ける環境を整備することが、法令遵守および安全管理の観点から強く求められています。

【労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について(厚生労働省)】
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001497674.pdf

1-2. AFGが求める5つの柱と「職場環境の改善」

事業者は、AFGに基づき以下の5つの柱に沿った取組みを行うことが求められます。

  1. 安全衛生管理体制の確立
  2. 職場環境の改善(ハード面・ソフト面)
  3. 健康・体力の状況把握
  4. 把握した状況に応じた対応
  5. 安全衛生教育

この中でも、特に「2. 職場環境の改善」におけるハード面の対策(身体機能の低下を補う設備・装置の導入)は、個人の能力に関わらず環境側でリスクを低減できるため、優先度の高い取組みとされています。軽量な安全衛生保護具(以下、保護具)の採用は、このハード面対策の代表例であるパワーアシストスーツ等の導入に準ずる、具体的かつ有効な手段です。

2. 職場改善の核としての「軽量保護具」とその役割

2-1. 安全配慮義務と客観的エビデンスの重要性

作業現場において労働者の命を守るヘルメットやフルハーネスなどの安全衛生保護具(以下、保護具)は不可欠ですが、その「重さ」は長年、作業者の身体的負荷や疲労の大きな要因となってきました。

使用者は、労働契約法に基づき労働者の安全を確保する「安全配慮義務」を負っています。特に20264月のエイジフレンドリーガイドライン(AFG)努力義務化を見据えると、保護具の軽量化による労働負荷の軽減は、労働災害を未然に防ぐための極めて重要な施策となります。

これまで、より「軽い」保護具を使えば身体が楽になることは、多くの作業者が経験的・感覚的に理解していました。しかし、「保護具の軽量化が実際にどれほど労働負荷を軽減し、疲労を抑制するのか」という点については、これまで科学的なエビデンスが決定的に不足していました

この「感覚的な理解」を科学的検証によって「客観的な事実」へと変えることは、法的に求められる安全管理や職場環境改善を、根拠に基づいて実効性高く進める上で不可欠なステップとなります。

2-2. 身体機能の低下を補うハードウェア

高年齢労働者にとって、保護具の重量が数百グラムから数キログラム軽減されることは、筋力や持久力の低下を物理的に補うことに直結します。

本編で紹介する共同研究では、このエビデンスを構築するために以下の谷沢製作所製・軽量保護具が使用されています。

  • ST#123グループ(「エアライトS」搭載ヘルメット):内装に「エアライトS」を採用し、従来品から大幅なコンパクト化と軽量化を実現。
    https://www.tanizawa.co.jp/products/123series/

3. 疲労軽減の科学的検証:皮膚ガス「アンモニア」のメカニズム

3. 疲労軽減の科学的検証:皮膚ガス「アンモニア」のメカニズム

保護具の軽量化がどれほど疲労軽減に寄与するかを明らかにするため、株式会社谷沢製作所と、東海大学理学部の関根嘉香教授(皮膚から放散される生体ガス「皮膚ガス」研究の第一人者)は、共同研究を実施しました。

【教員紹介:関根嘉香教授(東海大学)】
https://www.sc.u-tokai.ac.jp/sekineLB/home/kyoin/

3-1. 生体指標としてのアンモニア(疲労臭)

人間は活動に伴い、皮膚から常に微量のガス(皮膚ガス)を放散しており、その一種であるアンモニアは、身体の疲労度を反映する重要な指標です。

皮膚ガスにはアンモニアの他に、アセトアルデヒド(酒臭)、アセトン(ダイエット臭)等があります。

  1. エネルギー消費と代謝: 筋肉が活動してエネルギー源(ATP)が消費されると、代謝過程で老廃物であるアンモニウムイオンが発生します。
  2. 皮膚からの放散: アンモニウムイオンは血流に乗って全身を巡り、分子状アンモニアとなって皮膚から放散されます。これが「疲労臭」の正体です。
  3. 疲労の指標: 作業前後のアンモニア放散量の増加率を測定することで、身体にかかった負荷を客観的に評価できます。

3-2. アンモニアが引き起こすさらなる疲労

血中アンモニアは毒性物質でもあり、血液・脳関門を通過することで、筋力低下などの「末梢性疲労」に加え、集中力低下や昏迷を招く「中枢性疲労」を引き起こす指標とされています。

保護具の重さがアンモニア放散量を増やすことは、作業者の注意力低下を招き、災害リスクを増幅させることを科学的に示唆しています。

4. 研究結果の詳細:軽量化がもたらす劇的な抑制効果

4-1. 共同研究の実施内容

本研究は、以下の手順で詳細な検証が行われました。

  • 被験者: 工場や建設現場等での作業経験がある男女18名(男性12名、女性6名)。
  • 実験方法: 非ランダム化クロスオーバー試験を採用し、超軽量品と従来品の着用順序による偏りを排除しました。
  • 負荷内容: 建設現場での動作を模した1時間の作業(歩行および踏み台昇降30分、重量物持ち運び30分)を実施しました。
  • 測定と管理: 安定したデータを採取するため、試験前後の50分間は安静状態で皮膚ガスを捕集しました。また、食事(おにぎりとサラダに統一)や環境条件を厳格に管理して実施されました。

<比較対象に用いた試料>

超軽量品 従来品
ヘルメット ST#103B-JPZ
内装は「エアライトS
(約280g
ST#161-JZV
内装は「エアライト」
(約430g
フルハーネス ST#522KA-N
ST#5201(130)-KQP
「タフライト」
(約1,250g
ST#572A-N
ST#5701(130)-JQUG
(約2,000g

<実験風景(2025年7月9~11日実施)>

4-2. 実験結果データ:アンモニア放散量の増加率比較

作業負荷によるアンモニア放散量の増加率を比較した結果、軽量保護具の着用は疲労物質の発生を有意に抑制しました。

比較条件 測定部位 従来品

(増加率)

軽量品

(増加率)

抑制効果

(差)

ヘルメットのみ 首(後頸部) 22.0% 13.2% ▲8.8ポイント
フルハーネスのみ かかと(踵部) 37.0% 20.0% ▲17.0ポイント
ヘルメット+ハーネス併用 かかと(踵部) 62.0% 40.0% ▲22.0ポイント

4-3. データの分析と知見

頸部負荷の軽減(ヘルメット):
ヘルメットのみの比較では、超軽量品の増加率(13.2%)は、従来品(22.0%)より8.8ポイント低く抑えられました。これは質量が30%減(430gから280gへ)したことで、頭や首にかかる局所的な負荷が大幅に減ったことを意味します。

試料で用いた超軽量ヘルメットST#103B-JPZは、ユーザーアンケートでもほぼ全員が「良い」評価であり「一日中被っても疲れない」という声もあります。

全身疲労の抑制(フルハーネス):
フルハーネスのみの比較では、超軽量品の増加率(20%)は、従来品(37%)より17ポイント低く抑えられました。これも質量が約40%減(2,000gから1,250gへ)したことで、疲労の増加率を大きく抑制したことを意味します。

試料で用いた「タフライト」も、ユーザーアンケートでは使用者の98%が「良い」評価をしており、「とにかく軽くて着心地が良くなった」という声もあります。

相乗効果(ヘルメット+フルハーネス):
ヘルメットとフルハーネスを併用した場合でも実験を行ったところ、従来品セット(2,430g)ではアンモニア放散量は62.0%も増加したのに対し、軽量品セット(1,530g)では40.0%と、大幅に増加率が軽減されました。

保護具は軽量化すればする程、疲れが軽減されることが推測できます。

この結果により、「保護具の軽量化」は作業員の疲労蓄積を抑えるための科学的に有効な解決策であることが裏付けられました。

5. 結論:持続可能な現場を支える「人的投資」

エイジフレンドリーガイドラインの努力義務化が20264月に迫る中、保護具の軽量化は単なる装備の更新ではなく、戦略的な職場環境改善の一環です。

疲労の軽減は労働者の集中力を維持し、転倒や墜落などの労働災害リスクを低減させます。これは、高年齢労働者が持つ貴重な知見や経験を長期間活用し続けるための必須条件です。

企業にとって、軽量保護具の導入に取り組むことは、安全配慮義務の履行であると同時に、生産性を高め、人材を確保するための重要な「人的投資」です。

科学的エビデンスに基づいた対策を講じることで、すべての世代が健康で安全に活躍できる職場の実現が期待されます。

ぜひ、谷沢製作所の軽量保護具をご採用下さい。

なお、上記内容の短縮版2種類のPDFデータをダウンロードできますので、ご活用ください。

エイジフレンドリーな職場づくりに保護具の軽量化(PDF形式947KB)
その疲れ、「重さ」が原因(PDF形式1.9MB)

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